愛知の「ものづくり」を止めないために!サプライチェーン攻撃の脅威と実例テンプレート

「うちは小さな会社だから、サイバー攻撃なんて関係ない」—そう思っていませんか。
しかし近年は、サイバー攻撃において、大企業そのものよりもその取引先である中小企業が狙われ、結果としてものづくり全体が止まってしまう事例が相次いでいます。
実際に愛知県内でも、たった1社のシステム停止が、地域の生産や物流を大きく揺るがす事態が起きており、そのような取引先を狙う攻撃を「サプライチェーン攻撃」と呼びます。

本記事では、「サプライチェーン攻撃」とは何か、なぜ「ものづくり県・愛知」が狙われやすいのか、実際に何が起きたのか、そして中小企業が今から何をすべきか、できるだけかみ砕いてご紹介します。

そもそも「サプライチェーン攻撃」とは?

言うまでもありませんが、私たちが日々手にする道具や機械製品は、1社だけでつくられているわけではありません。部品をつくる会社、組み立てる会社、システムを提供する会社、運ぶ会社—たくさんの企業が「鎖(チェーン)」のようにつながって成り立っています。この一連のつながりを「サプライチェーン(供給網)」と呼びます。

サプライチェーン攻撃とは、この鎖の中で「守りが弱いところ」を狙う攻撃のことです。
攻撃者は、必ずしも大企業を正面から狙うとは限りません。むしろ、そこへ入り込むための“入口”として、対策が手薄になりがちな中小企業を踏み台にすることがあります。

近年とくに多いのが「ランサムウェア」と呼ばれる被害です。これは、パソコンやサーバのデータを勝手に暗号化して使えなくし、「元に戻してほしければお金を払え」と要求する攻撃です。
1社がこの被害に遭うだけで、部品やデータの供給が止まり、その影響が取引先全体へと広がっていきます。

なぜ「ものづくり県・愛知」が狙われやすいのか

愛知県は、自動車をはじめとする製造業が集積する、日本有数の「ものづくり県」です。
この強みが、そのままサイバー攻撃の“狙いやすさ”にもつながっている面があります。

理由の一つは、サプライチェーンが非常に分厚く、何層にも連なっていることです。
完成品メーカーを頂点に、部品メーカー、そのまた部品をつくる会社…と多くの企業がつながっているため、どこか1社が止まると、その影響が全体に波及しやすい構造になっています。

さらに、日本の製造業では在庫を最小限に抑える「ジャストインタイム」方式が広く使われています。効率的な一方で、部品の供給が一時的に止まっただけでも、生産ライン全体がすぐに止まってしまうという弱さも抱えています。

加えて、業務のデジタル化(DX)が進み、社外とシステムでつながる機会が増えたことで、攻撃者が入り込める“入口”も増えています。つまり、地域全体が密につながっているからこそ、攻撃者にとっては「攻撃が成功した際のリターンが大きい標的」に見えてしまうのです。

事例1:部品メーカーへの攻撃が、完成車工場まで止めた

2022年、県内の大手自動車部品メーカーがランサムウェアの被害を受けました。その影響で部品の供給が滞り、取引先である完成車メーカーは、翌日に国内すべての工場(14工場28ライン)の稼働停止に追い込まれました。この1日の停止だけで、約1万3千台分の生産に影響が出たとされています。

注目すべきは、被害を受けたのが、いわゆる零細な「下請け」ではなく、グループを支える主要な取引先だった点です。一定の規模と体力を持つ企業であっても被害を免れられず、しかも事業が元どおりに近い状態へ戻るまでには数カ月を要したと報じられています。

「大きな会社だから大丈夫」でも「小さな会社だから狙われない」でもなく、サプライチェーンの一員である以上、規模にかかわらず被害の当事者になりうる—この事例は、そのことをはっきりと示しました。

事例2:名古屋港のシステムが止まり、地域の物流が停止した

止まるのは工場だけではありません。2023年には、名古屋港でコンテナを管理する基幹システムがランサムウェアの被害を受け、コンテナの搬出入作業が約3日間にわたって停止しました。

名古屋港は、国内でも有数の貨物量を扱う物流の要です。そこが止まれば、部品や製品の「運ぶ」流れがせき止められ、周辺の企業活動にも影響が及びます。この攻撃では、社外とつなぐVPN機器などの弱点が侵入口になった可能性が指摘されています。ふだん意識しにくい機器の設定や更新の見落としが、大きな被害につながりうるということです。

ものづくりは、「つくる」だけでなく「運ぶ」までがそろって初めて成り立ちます。この事例は、サプライチェーンのどの部分が止まっても、地域全体が影響を受けることを教えてくれます。

まとめ:どんな企業でも「巻き込まれる恐れ」を否定できない

2つの事例に共通するのは、「自社が最終的な標的でなくても、巻き込まれる」という現実です。中小企業にとって重要な示唆は、次の3点です。

  1. 自社の規模が小さくても、取引先ネットワークの一員として狙われ、攻撃の“入口”にされる可能性があること
  2. 1社の事業停止が取引先全体へ連鎖し、被害が一気に広がること
  3. 被害は生産や物流の停止にとどまらず、「あの会社は対策が甘い」という取引先からの信頼低下—ひいては取引の見直しにまで及びうること

自社のみならず、愛知の、ひいては日本の「ものづくり」を止めないために、まずは自社における「守りの弱いところ」はどこかを考えてみましょう。

愛知県サイバー攻撃対策ナビ2026