情報セキュリティ対策を進める中で、「ISMS」「ISO/IEC 27001」「IEC」といった似たような用語に混乱していませんか?
これらの用語はすべて密接に関連していますが、ビジネスの現場で最終的に求められるのは、「具体的に何をすべきか」という結論です。
この記事では用語の整理はもちろん、2022年の規格改訂のポイントや、企業が認証を取得する具体的なメリットについて、実務担当者向けに分かりやすく解説します。
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「ISMS」と「ISO/IEC 27001」の決定的な違い
まず最初に、最も混同しやすいこの2つの違いを整理しましょう。一言で言えば「仕組み」か「教科書」かの違いです。
| 用語 | ISMS | ISO/IEC 27001 |
|---|---|---|
| 役割 | 情報セキュリティマネジメントシステム 組織が情報を守るための「仕組み」 | ISMSを作るための「国際規格」 |
| イメージ | 自社で作るセキュリティ体制・ルール | 世界共通の「教科書」・ルールブック |
つまり、「ISO/IEC 27001」という世界共通の教科書(規格)を参考にして自社に合ったISMS(仕組み)を作り上げる、というのが正しい理解です。
日本国内規格「JIS Q 27001」との関係
日本国内で活動していると、「JIS Q 27001」という言葉もよく耳にするのではないでしょうか。
- ISO/IEC 27001: 英語で書かれた国際規格。
- JIS Q 27001: ISO/IEC 27001を日本語に翻訳し、日本の国家規格としたもの。
これらの内容は実質的に同じです。国内でISO/IEC ISO27001(ISMS認証)を取得する場合、基本的には日本語版である「JIS Q 27001」の要求事項に従って審査が行われます。
【詳細】ISO/IEC 27001を支える3つの機関
ISO/IEC 27001(ISMS認証)は、独立した第三者が客観的に評価・認定することで、初めてその信頼性が担保されます。この制度の正当性は以下の3つの機関が密接に連携し、相互に役割を果たすことで保たれています。
- 認証機関:
企業がISO/IEC 27001(JIS Q 27001)に適合しているか審査し登録証を発行する。 - 要員認証機関:
審査を行う「審査員」を審査し、資格を与える。 - 認定機関:
上記2つの機関がそれぞれの業務を行う能力があるかをチェック(認定)する。
これら3つの機関が厳格に機能しているからこそ、ISO/IEC ISO27001(ISMS認証)を取得した企業は「確かなセキュリティ体制」を備えていることを、自信を持って対外的にアピールできます。
ISO/IEC 27001の要求事項と2022年改訂
ISMSを構築するためには、規格が定める「要求事項」を満たす必要があります。
具体的には、以下の項目(第4章〜第10章)について、自社のルールを定めます。
- 4.組織の状況: 組織の課題や利害関係者を特定する。
- 5.リーダーシップ: トップマネジメントが方針を定め、責任を持つ。
- 6.計画: リスクを特定し、対応計画を立てる(リスクアセスメント)。
- 7.支援: 必要な資源(人・モノ・金)や教育を提供する。
- 8.運用: 実際にリスク対策を実施・管理する。
- 9.パフォーマンス評価: 内部監査やマネジメントレビューで状況をチェックする。
- 10.改善: 不適合があれば是正し、継続的に良くしていく。
2022年改訂のポイント
ISO/IEC 27001は2022年に改訂され「ISO/IEC 27001:2022」に、これにともない日本規格も「JIS Q 27001:2023」となりました。
この改訂で、サイバーセキュリティ対策やクラウドサービス利用時の管理策などが強化・整理されています。これから認証取得を目指す企業はもちろん、既に取得済みの企業も新しい規格への対応が必須となります。
なぜ今、ISO/IEC 27001が必要なのか?(メリット)
多くの企業がコストをかけてISO/IEC 27001(ISMS認証)を取得するのには、明確な経営上の理由があります。
情報セキュリティリスクの低減
認証取得のプロセスでは、社内のあらゆる情報資産の洗い出しを行い、詳細なリスク分析を行います。これにより外部からのサイバー攻撃だけでなく、内部不正やヒューマンエラーによる情報漏えいにいたるまで、全方位的な対策を講じることが可能になります。
対外的な信頼・ブランド力の向上
ISO/IEC 27001は国際規格です。
特に、大手企業との取引開始条件や、官公庁の入札参加資格としてISMS認証が求められるケースが増えており、ビジネスチャンスの拡大に直結します。
「守り」だけでなく、ビジネスを有利に進める「攻め」の施策としても有効です。
事業継続計画(BCP)の策定
「事業継続性」とは、企業が重要な業務を中断せず、あるいは早期に復旧・再開し、事業を継続する能力のことであり、これらを計画化したものが「事業継続計画(BCP)」となります。
例えば、地震や津波でデータサーバーが被災し、データが消失してしまった場合、事業を継続することができるでしょうか。一箇所にのみデータを保存している状況では復旧は困難ですが、遠隔地にバックアップを分散していれば、迅速な業務再開が可能になります。
ISO/IEC 27001(ISMS認証)では、こうしたリスクを事前に想定し、事業継続計画(BCP)として対策手順をマニュアル化することが求められます。万が一の事態に備えた計画をあらかじめ策定しておくことは、企業の存続を確かなものにする大きなメリットとなります。
業務効率の向上と意識改革
業務フローを可視化することで、形骸化していた無駄なルールが見直され、業務効率が上がることがあります。また、定期的な教育により、全従業員のセキュリティ意識が向上します。
ISO/IEC 27001取得のデメリットと解決策
メリットの反面、ISO/IEC 27001(ISMS認証)取得には以下のようなデメリットも存在します。
手間とコストがかかる
審査に必要な書類作成や、マニュアル整備の手間が発生します。
「自社に専門知識を持つ人材がおり、通常業務と並行しても支障がない」というケースは極めて稀であり、多くの企業がリソース不足という課題に直面します。加えて、更新の際には毎年の審査費用も発生します。
ルールが増えて現場が混乱する可能性
セキュリティを重視するあまり、現場の実情を無視したルールを策定してしまうことがあります。
「以前の手順の方がスムーズだった」「手間が増えて時間がかかる」といった不満が現場に蓄積すると、結果として業務効率の低下を招きかねません。
解決策:「身の丈に合った」運用の実現
これらのデメリットは、「自社の規模や実情に適したISMS」を構築することで最小限に抑えられます。過剰なルールに縛られず、必要最小限かつ実効性のある仕組みを構築することが、認証運用の成功を左右します。
LRMはISMSの運用をサポートしています。「運用負荷を抑えつつ、確実なセキュリティ体制を維持・運用を行いたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

IECの組織構成とISO/IECの違い
最後に、規格名称にもなっている「IEC」と「ISO」の2つの国際規格の違いについて詳しくまとめておきます。
IEC(国際電気標準会議)とは
IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)は、電気・電子技術に関する国際規格を策定している専門組織です。
「電気及び電子技術分野における標準化及び適合性評価等に関する国際協力、国際理解を促進し、これによって国際貿易の振興及び利用者の利便性の向上に寄与すること」を目的としています。
IECの組織構成
IECは総会をトップとして、合計10の管理部門(上層委員会)と114の専門委員会、103の分化委員会、1,593の作業グループ等によって構成されています。(2024年12月現在、89か国の会員国)
日本では1953年に日本産業標準調査会(JISC)が加入しています。
▼10の管理部門(上層委員会)の内訳
- 総会
- 評議会
- 標準管理評議会
- 市場戦略評議会
- 適合性評価評議会
- ビジネス諮問委員会
- 会長委員会
- IECフォーラム
- 多様性諮問委員会
- ガバナンスレビュー及び監査委員会
ISO(国際標準化機構)とは
一方、ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)は、電気・電子分野以外のあらゆる工業規格を策定する、世界最大の国際標準化機関です。
IECが「電気・電子」に特化しているのに対し、ISOはマネジメントや製造、サービスといった幅広い分野をカバーしています。
本来は独立した別の組織ですが、情報技術(IT)のように両方の専門性が求められる分野については、合同で「ISO/IEC」規格を策定しています。本記事で解説している「ISO/IEC 27001(ISMS認証)」は、その代表的な一例です。
まとめ
「ISO/IEC 27001(ISMS認証)」は、企業が情報を守り、対外的な信頼を獲得するための強力なツールです。
- ISO/IEC 27001: 国際規格(ルール)
- ISMS: 自社で作るセキュリティの仕組み(システム)
情報セキュリティ対策は、もはや「コスト」ではなく、企業が生き残り、信頼を獲得するための「投資」です。これから認証取得を目指す方は、まずは何から始めるべきか全体像を把握することから始めましょう。
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