情報セキュリティインシデントとは?その種類と事例などを解説

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情報セキュリティに関する事故や攻撃を「情報セキュリティインシデント」と言います。

万が一発生した場合、初動対応の遅れは命取りになりかねません。対応が遅れるほど、自社だけでなく、大切な顧客や取引先へと被害が連鎖・拡大してしまうリスクがあるからです。

この記事では、情報セキュリティインシデントの具体的な内容から、被害を最小限に抑えるための対策方法まで詳しく解説します。

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規格(JIS Q 27000:2019)における定義

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の基本規格である「JIS Q 27000:2019」では、「インシデント」とその前段階である「事象(イベント)」を以下のように定義しています。

情報セキュリティ事象(information security event)

情報セキュリティ方針への違反若しくは管理策の不具合の可能性、又はセキュリティに関係し得る未知の状況を示す、システム、サービス若しくはネットワークの状態に関連する事象。

情報セキュリティインシデント(information security incident)

望まない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象、又は予期しない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象であって、事業運営を危うくする確率及び情報セキュリティを脅かす確率が高いもの。

(引用元:JIS Q 27000:2019)

「事象」と「インシデント」と「アクシデント」との違いは

上記の定義を比較すると、「情報セキュリティ事象(イベント)」の中で、特に事業継続に重大な影響を与えたり、実際に被害を引き起こすリスクが高いと判断されたものを「情報セキュリティインシデント」と呼ぶことがわかります。

また、さらにインシデントが対策されずにそのまま進行・悪化し、実際に大きな被害や損失が発生してしまった「確定した事故」が「アクシデント」と呼ばれます。

セキュリティ対策においては、「インシデント」の段階で素早く察知し、「アクシデント」へ発展させないための初動対応が極めて重要になります

情報セキュリティインシデントが発生する3つの原因

組織で情報セキュリティインシデントが発生する原因は、大きく分けると「内的要因」「外的要因」「災害・外部環境要因」の3つに分類されます。

それぞれの具体的な内容と、よくあるトラブルの事例を解説します。

内的要因(組織・従業員に起因するもの)

「情報セキュリティ対策」というとサイバー攻撃への防衛をイメージしがちですが、実はインシデントの多くがこの「内的要因」によって引き起こされています。 従業員のヒューマンエラーや、リテラシー不足が主な原因です。

  • メールの誤送信・設定ミス: 宛先間違いやBCCとTOの指定ミスによる情報漏えい
  • 不正なデータ操作: アクセス権限を持つ者によるデータの消去や改ざん
  • ずさんなアカウント管理: ログインID・パスワードの使い回しや放置
  • シャドーIT(無許可利用): 会社の許可を得ていない私物端末や外部サービスの利用によるマルウェア感染
  • 紛失・盗難: 重要なデータが入ったPC、スマートフォン、USBメモリなどの置き忘れ

外的要因(悪意のある第三者による攻撃)

悪意を持った第三者から仕掛けられるサイバー攻撃や不正アクセスです。技術の進歩に伴い攻撃手法も巧妙化しており、常に最新の警戒が必要です。

  • 標的型攻撃: 特定の企業や組織を狙い定めたメールなどによるマルウェア感染
  • ランサムウェア: データを暗号化して人質に取り、復旧と引き換えに身代金を要求する攻撃
  • 不正ログイン: 盗まれた資格情報を悪用したアカウントの乗っ取りやなりすまし
  • DoS攻撃 / DDoS攻撃: 大量のデータを送りつけることで、Webサイトやサービスを停止に追い込む攻撃

災害・外部環境要因(不可抗力によるもの)

自社の対策だけでは完全に防ぐことが難しい、突発的な災害や外部サービスのトラブルです。これらは「防ぐ」ことよりも、起きたときにどう復旧するか「BCP対策」が重要になります。

  • 自然災害・インフラの停止: 地震、台風、落雷、火災などによるサーバー機器の物理的損壊や、セキュリティ設備の停電
  • 外部ベンダーの障害: 利用しているクラウドサービスや外部サーバーのシステム障害、それに伴うデータ損失
  • 外部サービスの停止: 業務で依存している外部インフラの突発的なサービス停止

まとめ:原因別の特徴一覧

因果の分類主な発生源対策の方向性
内的要因従業員のミス、リテラシー不足社内教育の徹底、ルールの策定、操作ログの監視
外的要因サイバー犯罪者、ハッカーセキュリティソフトの導入、脆弱性の修正
災害・外部環境自然災害、インフラ企業バックアップの常時取得、復旧手順(BCP)の策定

情報セキュリティインシデントの発生事例

情報セキュリティインシデントは決して対岸の火事ではありません。ここでは、多くの企業で起こり得る代表的な3つの事例を、その原因と対策とともに紹介します。

事例1:業務委託先の元従業員による個人情報の不正持ち出し(内部不正)

大手通信キャリアの業務委託先において、元派遣社員によるデータの不正持ち出しが発生した事例です。

概要: 元派遣社員が業務用PCのセキュリティの隙を突き、個人で契約している外部のオンラインストレージへアクセス。顧客の氏名や住所、電話番号など約600万件に及ぶ個人情報を不正に持ち出しました

企業の対応: 社内のネットワーク監視システムが異常な挙動を検知したため、即座に対象端末を隔離。ログの全件調査と警察への相談を行いました。日頃からの「ネットワーク監視」による早期発見が、被害の拡大防止につながった事例です

事例2:会員サイトへの「リスト型攻撃」による不正ログイン(外部攻撃)

知名度の高い企業のWebサービスや会員サイトを狙った、悪意ある第三者によるサイバー攻撃の事例です。

概要: どこか別の場所で流出した「IDとパスワードのリスト」を使い、システムへ機械的に連続ログインを試みる「リスト型攻撃」を仕掛けられました。結果として数万件のアカウントに不正ログインされ、登録されていた個人情報が閲覧されるリスクが発生しました

企業の対応: 異常なアクセスを検知後、被害に遭った全アカウントのパスワードを強制的に初期化。さらに、二段階認証や画像認証の追加、特定の不審なIPアドレスからのアクセスを自動遮断する仕組みを導入しました

事例3:クラウドサービスの設定ミスによる情報漏えい(設定ミス)

システムやクラウドサービスを利用する際の、管理者の設定ミス(ヒューマンエラー)による事例です。

概要: 官公庁の受託業務において、関係者間でファイルを共有するためにクラウドサービスを利用していた際、アクセス権限の設定を誤るミスが発生。本来は見られてはならない別の事業者に、約1万人分の個人情報が含まれるデータを閲覧・ダウンロードされてしまいました

企業の対応: 誤ってダウンロードしてしまった関係各所へ速やかに連絡し、データの完全削除を確認。その後、利用しているクラウド環境のアクセス権限を厳重に総点検し、再設定と運用ルールの見直しを行いました

情報セキュリティインシデントへの事前対策

実際にインシデントが発生した際、迅速かつ適切な対応を取るためには、平時からの入念な事前対策が欠かせません。

事前対策は、大きく分けると「体制(組織)」「人(従業員)」「システム(技術)」の3つのアプローチに分類されます。それぞれの具体的な進め方を解説します。

情報セキュリティ体制の整備(組織面の対策)

インシデント発生時は1分1秒を争う迅速な対応が求められます。有事の際に迷わず動ける組織体制を平時から整えておきましょう。

専門人材の確保・育成: 復旧作業には専門知識とスキルが必要です。社内での人材育成や、高度なスキルを持つ人材の新規採用を検討しましょう。

指揮系統と連絡網の明確化: 緊急時のメンバー編成、報告ルート、指揮系統を事前にマニュアル化し、関係者間で共有しておきます。

夜間・休日の対応備え: サイバー攻撃やトラブルは時間を選びません。できれば夜間や休日であっても、緊急招集や初動対応がかけられる体制(CSIRTなど)を構築しておくのがベストです。

あるいは、外部の専門家によるサポートを受けながら、ISMSなどの第三者認証を取得して組織的な体制を構築するのも効果的です。

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従業員の教育・訓練(人的面の対策)

インシデントの多くはヒューマンエラーに起因するため、全従業員のリテラシー向上は非常に有効な防御策です。

基本ルールの徹底: 高度な技術を学ぶことだけが教育ではありません。「不審なメールは開かない」「セキュリティソフトの警告が出たら情報システム部門に報告する」といった、基本ルールの遵守を徹底させます。

予行演習(訓練)の実施: 知識として学ぶだけでなく、実際のインシデントを想定した訓練を行うことで、いざという時の対応力が身につきます。

従業員に模擬の不審メールを送信し、「実際に開封してしまうか」「ルール通りに適切な報告ができるか」をチェックする訓練が効果的です。

例えば、「セキュリオ」の標的型攻撃メール訓練では、不審なメールを従業員に送信し、開封やクリックをしないか、適切に報告できるかをチェックする予行演習が実施可能です。

7日間の無料トライアルもありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

システム・技術面での対策

トラブルが起きることを前提に、被害を最小限に抑え、素早く復旧するための仕組みをシステム側に組み込みます。

確実なデータバックアップ: 業務で使用する重要データのバックアップは必須です。ランサムウェア対策や災害対策(BCP)も見据え、ハードディスクなどの物理媒体への記録や、遠隔地・クラウドへの保管も検討しましょう。

定期的なシステムチェックとログ監視: サーバーやネットワークのログは正常時こそ定期的に確認し、不審な挙動がないかチェックします。アクセス数が多い場合は目視が難しいため、「異常ログを自動検知するツール」の導入がおすすめです。

脆弱性(セキュリティの弱点)の管理: 利用しているPCやネットワーク機器のベンダー情報、および外部の脆弱性情報データベース(JVNなど)を日頃からチェックします。脆弱性が報告された場合は、速やかに修正プログラム(パッチ)を適用するルールを徹底してください。

情報セキュリティインシデントが発生したら

もし自社で情報セキュリティインシデントが発生してしまったら、被害を最小限に抑えるために「迅速な初動対応」と「的確な事後処理」が不可欠です

有事の際は、あらかじめ社内で策定したルール(インシデント対応マニュアル)に従い、以下の3つのステップでパニックを起こさずに対応を進めましょう。

ステップ1:初動対応(被害の拡大防止)

インシデントを検知した直後に最も優先すべきは、被害をそれ以上広げないための「隔離」です。

  • ネットワークからの即時遮断: 例えば、あるPCがコンピューターウイルスに感染した場合、他のPCや社内サーバーへの二次感染を防ぐため、即座に社内ネットワークから切り離します。
    • 有線LANの場合: すぐにLANケーブルを物理的に抜く
    • 無線LAN(Wi-Fi)の場合: PCのWi-Fi機能をオフにする
  • 担当窓口への速やかな報告: 独断で処理しようとせず、社内のシステム管理者やセキュリティ担当者(CSIRTなど)へ即座に第一報を入れます。

ステップ2:調査・復旧(原因の特定と安全な復旧)

被害の拡大を食い止めたら、状況を正確に把握し、業務の正常化を目指します。

  • 「何が起きたか」の記録: 後の原因究明や関係各所(必要に応じて警察や個人情報保護委員会など)への報告のため、発生のタイムラインや被害状況、システムログを確実に保存・記録します。
  • システムの復旧: ウイルスの駆除やセキュリティパッチの適用、バックアップデータからの復元などを行い、安全性が確認された段階でシステムを再開します。

ステップ3:事後対応(原因分析と再発防止)

無事にシステムが復旧したからといって、対応は終わりではありません。同様のインシデントを二度と起こさないための「仕組み化」が必要です。

  • 根本原因の分析: 「なぜ今回のインシデントが発生したのか」「技術的な問題か、それとも人間の運用ミスか」を徹底的に洗い出します。
  • 再発防止策の策定: 分析結果をもとに、システムのセキュリティ強化、社内ルールの見直し、従業員への再教育などを行い、組織全体の防御力を高めます。

インシデントが無事に収束した後は、目の前の復旧作業だけで満足せず、「なぜ起きたのか」の徹底的な分析と「再発防止策」の策定が不可欠です。

このとき、発生した事象から対応のプロセス、最終的な再発防止策にいたるまでを「インシデント管理台帳」で一元管理しておくことを強くおすすめします。

まとめ:「インシデントに強い組織」へ

この記事では、情報セキュリティインシデントの具体的な種類や原因、そして求められる対策について解説してきました。

重要なポイントを振り返ると、以下の3点に集約されます。

  • 多種多様なリスクの理解: インシデントの原因には、外部からのサイバー攻撃だけでなく、従業員のミス(内的要因)や災害など、非常に多くの種類が存在します。
  • 「システム」と「人」の両輪で防ぐ: セキュリティを確保するには、システム面の強化だけでなく、日頃からの従業員への教育・訓練(リテラシー向上)が不可欠です。
  • 事前対策と事後対応の徹底: 発生原因を正しく理解して事前に対策を講じること、そして万が一の発生時にはマニュアルや台帳に沿って迅速に対応することで、被害を最小限に抑えられます。

情報セキュリティ対策に「これで完璧」という終わりはありません。万が一の事態に備え、まずは自社のリスクの洗い出しと、有事の際の体制づくりから始めてみてはいかがでしょうか。

組織のセキュリティ基盤を強化し、信頼性を高める「ISMS認証」。 これから認証取得をお考えの方や、自社に最適なセキュリティ体制を構築したい方は、ぜひ一度LRMにご相談ください

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ISMS / ISO27001認証取得を目指す
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