クラウドとは結局何を指すのか?クラウドコンピューティングの定義

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クラウドとは何か?その定義を追いかけてみると、1つの定義に決められているものではありません。多くの定義がありすぎて、どれが正しい定義とすることもできないようです。

もともとは、インターネットの黎明期から多数のコンピューターによりアプリケーションをサービスとして共用することが模索され、現在に至っています。企業のリソースの効率的な利用が、インターネットを通じて実現できないか?という発想から、インターネットでサービスに接続、利用する現在のクラウドの姿に至っています。

改めてクラウドとは何か、各種文書による定義から現在のクラウドサービスの各要素・サービスの種類まで、順を追ってご紹介します。

経済産業省のドキュメントでのクラウド定義

経済産業省が発行しているドキュメントでは、クラウドコンピューティングが次のように定義されています。

共有化されたコンピュータリソース(サーバ、ストレージ、アプリケーションなど)について、利用者の要求に応じて適宜・適切に配分し、ネットワークを通じて提供することを可能とする情報処理形態

経済産業省(2013) クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン

この文書では、「共有されたリソース」「利用者の要求に応じて」という2つのクラウドの特徴が読み取れます。

また、共有されるリソースについては、サーバやアプリケーションなどが例示として使われています。

総務省のドキュメントでのクラウド定義

これに対して、インターネットの監督官庁である、総務省のドキュメントではどのように定義しているでしょうか。

利用者による共有が可能であり、利用者の要求に応じたセルフサービス提供と管理の機能を併せ持つ、拡張性と弾力性に富んだ物理又は仮想資源のプールに、ネットワークを通じてアクセスすることを可能にする情報処理形態

総務省(2014) クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン

先ほどの経済産業省の定義では「共有されたコンピュータリソース」という書き方が使われ、ハードウェア・ソフトウェアといったモノを中心とする発想ですが、総務省の定義によると、さらに「物理又は仮想資源のプール」というもっと抽象的な「共有」を示す言葉が使われています。

若干抽象的すぎるところがありますが、定義の中にこれからクラウドコンピューティングで共有できる対象を限定したくない、という見方をしていることが推測されます。

ただ、これはほとんど次にご紹介するISO/IECの日本語訳、と考えてよい内容です。

ISO/IEC 17788でのクラウド定義

国際規格であるISO/IEC 17788では、クラウドコンピューティングが以下の通りに定義されます。

Paradigm for enabling network access to a scalable and elastic pool of shareable physical or virtual resources with self-service provisioning and administration on-demand.

Examples of resources include servers, operating systems, networks, software, applications, and storage equipment.

JIS X 9401でのクラウド定義

JIS X 9401のクラウドコンピューティングの定義は以下とおりです。

セルフサービスのプロビジョニング及びオンデマンド管理を備える、スケーラブルで伸縮自在な共有できる物理的又は仮想的なリソース共用へのネットワークアクセスを可能にするパラダイム。

注記 リソースの例には、サーバ、OS、ネットワーク、ソフトウェア、アプリケーション及びストレージが含まれる。

日本工業規格 JIS X 9401:2016 (ISO/IEC 17788:2014) 情報技術−クラウドコンピューティング− 概要及び用語

JIS X 9401 はISO/IEC 17788の日本語訳ですが、内容は総務省の定義とあまり変わらないようです。

ユーザーがサーバの使用領域・容量を決め、あるいは、アプリケーションのどの機能を使うかを取捨選択し、オンデマンドで使うことができるもの、という意味のようです。

アメリカ国立標準技術研究所のドキュメントでのクラウド定義

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)におけるクラウドコンピューティングの定義を紹介します。

NISTは「The NIST Definition of Cloud Computing(NIST によるクラウドコンピューティングの定義)」というドキュメントを発行しています。

IPAがその文書の中で、NISTによる定義を以下のように紹介しています。

クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。

IPA(2011) NISTによるクラウドコンピューティングの定義

これに対して、現在の日本のベンダーが紹介している定義は、次の通りです。

クラウド(クラウド・コンピューティング)は、コンピューターの利用形態のひとつです。インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)が提供するサービスを、利用者はネットワーク経由で手元のパソコンやスマートフォンで使います。

NEC 初心者でもわかるクラウド入門

NISTが最小限の利用手続き、といっているところはネットワークプロバイダを想定しているものと推測しますが、スマートフォンでサービスに接続していることがまさに最小限の利用手続きに当たると思います。

クラウドが誕生した背景

さらに、定義からクラウドの誕生の歴史をさかのぼると、2006年当時のGoogleのCEOであるエリック・シュミット氏が提唱したものです。

もともとは、多くの企業で多くのサーバを持つことに非効率性を感じていたことから、Googleではどうやって多くのサーバーを管理・統合していくかが課題でした。

クラウド・コンピューティングは、1台の物理サーバーに複数台の仮想サーバーを起動できるハイパーバイザー(仮想化技術)により実現し、物理サーバー1台分のスペースで複数の仮想サーバーを運用できるようになります。要するに、クラウド・コンピューティングは、仮想化技術により実現されたものなのです。

クラウドの導入によるメリット

クラウドが導入されると次にあげるようなメリットが生じます。

サーバーリソースの自由なスケーリングが可能

リソースは基本的に必要な分だけ拡大でき、不要になれば縮小できます。さらに、自動でサーバーリソースを拡大・縮小することができます。

スケーリングができることは、キャンペーンサイトや繁忙期・閑散期が存在するシステムに最適です。

迅速なシステム展開ができる

オンプレミスでは、サーバーリソースの手配に数週間単位の時間を要し、導入が迅速にはできません。

これに対して、クラウドでは必要になった時にWeb上で申請すればすぐにシステムを展開できるようになります。

クラウドベンダーのデータセンターを使用できる

データセンターを自前で持つ必要がありませんので、特にイニシャルコストを削減できます。

クラウドベンダーの持つ最新鋭のシステムを装備したデータセンターを利用できるので、セキュリティ・バックアップも自前で施策を施すより安価でなおかつ堅牢・大量のバックアップデータをとることができます。

クラウドのタイプ

現在、クラウドサービスとして以下のものが利用されています。

Infrastructure as a Service (IaaS)
通信・サーバなど、インフラストラクチャーを通信を介してクラウドで共用できます。
Platform as a Service (PaaS)
開発プラットフォーム、サービスプラットフォームなどの種類がありますが、クラウドにより提供されるプラットフォームです。
SaaS (Software as a Service)
主にアプリケーションソフトウェアの機能をクラウドで提供するものです。典型的にはWebアプリがこの一種です。

まとめ

以上により、一つの定義には決まらないクラウドコンピューティングですが、その本質はむしろ機能の方にあり、通信でサービスを共用できることにあります。

また、リソースの割り当ても、メンテナンスもクラウドではサービスプロバイダ任せですので、これらの工数もコストもすべて利用料金に含まれ、企業の資産を最適化することができます。

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