想像よりも対象は広い?電気通信事業法の『届出』が必要な場合とは

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電気通信事業法における「電気通信事業」は、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業のことをいい、届出が必要です。総務省情報通信統計データベースによると、12500件ほどの届出電気通信事業者が存在しています。

届出は、行政法によると原則は禁止されていない業務ではあるが、行政の監督に服させるために、届出により最小限の参入制約を課することとされています。

電気通信役務、言い換えると電気通信に関するサービスは、非常に広い概念を含んでいるので「この業務に届出が必要なの?」と思うような業務が含まれています。そのため、届出を忘れることや、そもそも知らないことも多く、気づかない間に法令違反となっていることもあります。

そこで、届出をしなければならない場合と、届出の留意点について、押さえていただくためこの記事で解説します。

電気通信事業に該当すると届出が必要

電気通信事業に該当すると、原則として届け出が必要になります。

電気通信事業は、監督官庁である総務省によると、広く電気通信設備を他⼈の通信の⽤に供することをいいます。ただし、自分が他人と通信しているだけであれば、電話を掛ける、インターネットを利用する、といった行為と本質が変わりませんので、ここまで届出を必要とはしていません。

電気通信事業法でいう「電気通信事業者」に該当する範囲は広い

事業として、他人と他人の通信を媒介する場合、電気通信事業であるとして届出が必要になります。この届出が必要な事業の範囲が意外に広いことに注意が必要です。

携帯電話会社やインターネットサービスプロバイダといったような、通信のための設備を用意し、それを用いたサービスをお客さんに提供するような会社は、典型的に他人と他人の通信を媒介していますので、届出が必要です。

また、レンタルサーバ事業のように、他人と他人の通信をサーバで媒介しているサービスが電気通信事業である、というとイメージがわきやすいものと思います。

Webサービスなどは届出を怠ってしまう事業者も

しかし、これらの目に見える装置を使って他人の通信を媒介している場合のほか、次のようなソフトウェアとサーバを介した他人と他人の通信の媒介も電気通信事業に当たります。

  • メッセージアプリ
  • Webサービス内でユーザー同士のメッセージのやり取りができるようなサービス

これらのサービスを提供している場合にも、電気通信事業者としての規制を受け、届出が必要です。例えば、Webサービス内でメッセージボックスやチャットを設置、ユーザー同士がメッセージのやり取りができる機能がある場合ですと、届出が必要となります。

これに対して、ユーザー同志がメッセージのやり取りをするのではなく、サービス提供者との間でしかメッセージのやり取りはしない、あるいはメッセージ機能がない場合は、届出は不要です。
しかし、メッセージのやり取りの機能を有するアプリやクラウドサービスを提供しているケースでは、届出を失念しているか、そもそも届出しなければならないことを知らないといった事業者の方もいるようです。

届出をしないと、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金が課されることがあるので、届出はしなければなりません。なお、届出ではなく、電気通信事業者には登録が必要な場合があります。
届出か、登録かの違いは、電気通信回線設備の設置の有無と、事業の規模によります。市区町村を超える規模(中継装置にあっては都道府県)になると、登録が必要になります。

事業者側の負担は登録の方が届出よりも重くなります。登録手続きの方が少し時間も長くかかりますし、書面の準備そのものも、届出より時間がかかる内容です。ただし、行政書士などの代理人に任せると、1か月以内で登録は済ませられるようです。

なお、ここでいう事業者には法人も個人も含まれています。個人でも電気通信事業を営む場合は、届出または登録が必要になるのです。

「届出」が必要な場合はどんなことをすればいい?

届出は具体的に何をすればよいかですが、届出は、所定の書類を埋めて各地域にある「地方通信局」に提出することにより完了します。

所定の書類やその送付先等の情報はWebで調べられます。総務省の各地方通信局のページに記載されて、書類もダウンロードが可能です。
関東地方の事業者のためのダウンロードページはこちらです
Webページには様式が掲載されており、これに沿って記入例を見ながら埋めていくだけなので、書類自体は比較的簡単に作成できるかと思います。

届出は開業前にしておくべきなので、遅れてしまうことも法令違反になります。
ただし、実際届出を忘れてしまった場合でも速やかに届出を行うと、罰則が適用されないか、あるいは、軽くなるということです。
届出の必要性があるか、また、届出はなく登録ではないか?といった疑問を持った場合、参考になるのが「電気通信事業参入マニュアル」(増補版)です。総務省が出している電気通信事業のガイドブックであり、届出の際にも参考になる情報が掲載されています。

ところで、電気通信事業は、サーバを有していると、Webアプリでユーザーの通信を媒介するだけでできてしまうので、届出をすることが法令遵守の盲点になることがあります。
届出を怠ってしまうことは、情報セキュリティ体制の中でも重大な意味を持つもので、ISMSの取組みの中で必要な「組織に関連する法令の特定」にあたる活動を十分にしてない、という評価につながります。

ISMS対応・JISQ対応をするうえで、本来対応しなければならない法律上の義務をしっかりと遵守しているかを確認するうえでは、盲点になる法令がないように十分チェックする必要性があるのです。そのため、最悪認証や更新に差し支えが出る可能性があります。
情報セキュリティ以外の面、営業面でもレピュテーションに傷が付いたりします。入札参加にも差支えが出ることがあるでしょう。

届出行為そのものは簡単ですが、組織に関連する法令の特定は、そのチェックを行う体制の構築も含め、つい中小の事業者・管理部門が小さい事業者では怠りがちです。この電気通信事業法の例を教訓として、専門家にアウトソースするなどして、定期的に行うことがおすすめです。

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電気通信事業の種類とは

電気通信事業と、電気通信事業者の分類は、かつて電気通信装置を持っているか、持っていないかにより、第1種・第2種と事業が分かれていました。現在は、登録事業者と、届出事業者の2つの区分があり、事業そのものも、以下の2区分に分かれています。

他人と他人の通信を媒介する事業
届出電気通信事業
伝送装置を持っている・事業が行政区を超える
登録電気通信事業

電気通信事業は、かつては許可制(=原則禁止、特別に行ってよいとする意味)が取られていましたが、現在は、参入の際に最小限の制約を課する届出制を取っており、参入のハードルはかつてより下がっています。

まとめ

電気通信事業者は届出を行って事業を行う必要があります。しかし、サーバとアプリで提供できるような電気通信事業もあり、こうした場合は、届出があることを知らなかったり、あるいは遅れてしまったりも士がちです。

届出は所定の用紙に記載事項を記載するのみで比較的に簡単に行うことができます。Webからダウンロードをして忘れずに開業前に行っておきましょう。

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